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一問一答

一問一答について

しばしば質問される内容について回答をまとめました。詳細については資料をご覧ください。

踏み違い事故の特徴

質問 踏み間違い事故の特徴にはどのような傾向があるのでしょうか?
回答 全国の踏み間違い事故を分析した結果、一般的な事故と比べて、交差点の近傍と駐車場など道路以外の場所 で(どこで)、高齢者と若年者が(だれが)、低い速度域、発進時、追突と単独(どのような)事故の比率が高い傾向に あるようです。事故全体が大幅に減少する中、踏み間違い事故の減少幅はより緩やかで、相対的に重要度は増して いるといえます。
回答者 田久保
質問 踏み間違い事故は若年者と高齢者で多いようですが、その違いはなんでしょうか?
回答 確かに踏み間違いの事故は若年者と高齢者の双方で多いのですが、踏み間違える原因は違うと思います。 若年者は運転操作に不慣れであること、高齢者は運転操作そのものには慣れているはずなので、それ以外の要因 が原因になっていると考えられます。踏み間違いによる事故に至った場合、何らかの原因で踏み間違い→慌て→操作 対応できずという部分は同じであるかもしれませんが、若年者の場合は「誤って踏んだペダルを離す→ブレーキを踏ん で止まる」ということが出来る可能性が高齢者に比べて高い、という可能性が考えられます。
なお操作不適による事故の中でも、高齢者で踏み間違いが増えることはITARDAのレポートにも示されています。
回答者 篠原
質問 高齢者が踏み間違えてしまう原因としてどのようなことが考えられるでしょうか。
回答 いろいろな身体的・心理的要因が影響していると思われます。事故発生時のデータを検証すること自体が難しいため、 確定的なことは言えません。しかし、「加齢に伴う認知機能の衰え」が重要な要因となっていると考えられます。
  • 注意機能の衰え

    運転のような複雑な行動を行う場合に、若い頃と異なって次第に注意を向けられる範囲が狭くなり、運転中に見落とし ていたものに突然気づいて驚いたり、あるいは何か気になるものがあるとそれに過剰に注意が向けられ、他のことに注意が向 きにくくなると言うことです。

  • 行動のコントロール能力の衰え

    注意機能の衰えに伴って驚いたり不注意になったりした時にペダル操作をすると、「行動の省略」が起こりやすくなると 考えられます。例えばブレーキを踏むときは、アクセルから足を離す→足を移動させる→ブレーキを踏むという一連の流れで反応 しないといけませんが、離したり移動させたりすることをきちんとせず、いきなり踏み込むという行動に出てしまう、というようなことです。 これは、本人は普通にペダル操作をしたつもりなのに、実際には足が動いていないということです。ここから、「ブレーキを踏んだ のに止まらなかった」という感覚が生じるのだろうと思います。
    また、誤ってアクセルを踏んで閉まった場合、すぐにペダルを離せばいいのですが、実際には踏み続けて事故に至ります。 これもまた行動のコントロール能力に関係するものだと思います。筋力が衰えて体が動かないということとは別に、体を思うよう に動かせない、という問題があると思います。
    認知心理学では、加齢に伴う認知機能の低下を説明する「抑制機能低下仮説」と呼ばれる学説があります。私たちの行動は、 いくつかの行動を順序よく実行していくことで成り立つことが多いですが、それぞれの行動の「しやすさ」には違いがあります。 いくつかの行動を順序よく行う場合に必要になるのが「抑制」の働きです。これがないと、「しやすい」行動を先にやってしまい、 結果として行動が失敗してしまいます。ところが加齢に伴ってこの抑制機能が落ちてくると、「しやすい」行動を止めておくことが できず、ついやってしまうことになります。車を止めようと思う場合、「止める」という行動に直結する動作は「ペダルを踏み込む」 ということです。「ペダルを離す」、「踏みかえる」行動をする前に、踏み込みという行動をしてしまう、ということになるのではと考えます。
    このほか、ペダル操作をするときの身体の姿勢の問題(体の向き、足の置き方、ペダルを操作する時の足の使い方が踏み間違いに 影響する可能性があると思われます)、高齢者特有の足の感覚(身体感覚、触覚が加齢や高齢者に特有の病気等に伴って鈍 くなる)の問題なども影響すると思われます。

回答者 篠原

認知機能

質問 「踏み違い」は運動機能に関係することのようなのに,なぜ認知機能が関係するのでしょうか?
回答 よく知られているように,我が国では75歳以上のドライバを対象として認知機能が高齢者講習と併せて測定されています (認知機能検査については警察庁サイトを参照して下さい).
しかしながら,考えてみると当然ですが,認知機能は75歳になると突然に変化するわけではありません.我々の研究グループでは, 若年者と高齢者の認知機能を測定してその比較を行うことで,自動車運転,特にアクセルとブレーキの踏み間違いに関わると考え られるものを検討してきました.認知機能を測定する理由は私たちの行動が実現するまでの過程に深く関わっているためです.つまり, 最終的な行動を導くものが認知機能と言えると考えられます.
現在のところ,我々は,「抑制機能」と言われる認知機能に焦点を当てていくつかの研究を行っています.また,抑制機能などの認知機能とともに,運動機能の側面からも検討を行うことも重要である と考えています.
これらのことから,私たちの行動における認知と運動の一連の流れをあわせて理解することがアクセルとブレーキの踏み違いの 生起要因を解明するために必要となると考えられます.
回答者 木村

ペダルの操作方法

質問 踏み間違いをしやすいペダルの踏み方がありますか。
回答 教習所ではアクセルペダルはかかとをついて踏み、ブレーキペダルは足を浮かせて踏み込む、というように指導されているようです。 多くの指導員の方はこの方法で教えていると言われます。技能教習の指導要領ではアクセルペダルを踏む場合には「かかとを床につけ、 かかとを支点にして足首を軽く動かしながら、つま先で静かに踏む」、ブレーキペダルを踏む場合には、「ブレーキペダルの中央を足の 指の付け根付近でジワーッと踏ませる」と書かれています)。また足はまっすぐ踏み込むように指導されるようです。ただし、自動車メーカー によっては、ドライバーがこのような踏み方をすることを前提にしていない場合もあるようです。
我々の調査結果が示すように、ペダルの操作方法には個人差がかなりあり、人によってどのような操作方法をしているかに違いがあります。 操作方法と踏み間違いの関係について明確なことはまだ言えません。ただし、ペダル操作は視認しながらするものではなく、「体の感覚」 で行うということをふまえると、体の向きが不安定であるとか、踵が床に全く付かない状態(体格の小さい人や座席の高さ調節が適切に行 われていない場合にありえます)で操作することは危険と思われます。運転する前に体がまっすぐ正面に向かう状態で着座し、正しい運転 姿勢をとること、高さ調節によりペダルを踏む時に踵が床に付く状態にすることは有益だと思います。
回答者 篠原
質問 ペダルの踏み方の認識と実際のペダル操作はどのように関係しているでしょうか?
回答 実車を用いた調査では、ドライバーのペダル踏みかえ操作は9種類に分類されました。その中で、適切な踏みかえ操作を行っていたのは、 約39.3%(135名中53名)と半数以下でした。また、質問紙調査におけるペダル操作法に関する項目への回答内容と、実際のペダル操作法 の比較では、両操作法の一致率は低かったことがわかりました。この結果から、適切なペダル操作をしているつもりでも、実際には不適切な ペダル操作を行っているドライバーが一定数いることが明らかとなりました。
回答者 中村
質問 両足を使って、右足でアクセル、左足でブレーキという操作方法だと踏み違いは起こりにくいのではないでしょうか?
回答 片足での操作よりも、右足でアクセル、左足でブレーキという両足を使う操作がよいという主張は以前からあり、インターネット上でも その主張を見かけることがあります(参考に挙げたサイトをご覧ください)。現状ではアメリカでも片足での操作が主流であるようで、 片足での操作(one-foot style/unipedal)と両足での操作(two-foot style/bipedal)のどちらがいいのかの議論が続いています。 両足操作のほうが優れていることを実験的に示した研究も ありますが、この問題について科学的に検討した研究は十分に行われているとはいえません。
長年にわたってペダル踏み間違いの研究を行ってきた研究者が、この問題について論文を発表しています。この論文では両足 での操作に対する批判とそれに対する反論を述べ、結論として両足での操作をすすめています。この論文によれば、左足と右足でペダル 踏み込みの動作と反応の速さにはわずかに違いがありますが、反応の速さにはそもそも大きなばらつきがあり、どちらが早いということは 問題になりません。また左足のほうが右足に比べて不器用に感じられることは練習により克服できます。ペダル踏み間違いは、足の動作 を完璧にコントロールできず行動にばらつきが生じることが直接的な原因と考えられます。よって、右足はアクセル、左足はブレーキという ように操作対象を固定し、踏みかえのような足の動作を不要にすることで踏み間違いの可能性を下げることができるということです。また、 両足での操作の方が各ペダルを細かく操作できるので、よりスムーズな運転ができるとも述べられています。
両足でのペダル操作にはメリットが多そうですが、実際にこの操作法を使う場合に注意すべき点もあると思われます。一つは、 長年片足での操作に慣れている人が両足での操作に切り替える場合、それなりに練習が必要になるということです。先に紹介した 論文によれば、この切り替えにどのくらいの訓練が必要なのかについての知見はないとのことです。長い運転経験を持つ人は、ペダル 操作はほとんど無意識に行えるようになっているはずです。長年行ってきた片足での操作から両足での操作へと、既に習慣化した 行動を変えることは一般的に難しいものです。また、うまく切り替えることができたつもりでも、特に緊急時には長年の習慣が出現しがち です。さらに、現在の市販車のペダルは片足での操作を前提として設計されています。そのようなペダル配置の車で、設計者の想定に 反する両足での操作を行うことがどのような問題を引き起こすのかは不明です。このように両足での操作にはよくわからない点も残され ており、実際に実行される場合には注意が必要だと思います。
※本項は「日本医事新報」の質疑応答として掲載されたものです。
回答者 篠原(2019/5/13追記)

ペダルの配置

質問 アクセルとブレーキの間の距離は踏み間違いに影響するのでしょうか?
回答 NHTSAの報告では,ペダル間距離は直接的に踏み間違いに影響するとはされていません.しかし,高身長群はペダル間距離に影響が出ると いう事故データからの統計情報があります.つまり,高身長群はペダル間距離が広くなるとペダル踏み間違い事故が起こりやすくなり,低身長群は そのような傾向がないという報告がなされています.今回のドライビングシミュレータを用いた実験では,そのような傾向が直接的に現れたわけでは ありませんが身長の影響によりペダル間距離が変化すると,結果的に踏み間違いに繋がる可能性があると考えられます.。
回答者 小谷・朝尾・荒川・渡邉

運転姿勢の影響

質問 不適切な運転姿勢をとると、ペダル操作に対してどのような悪影響がありますか。
回答 座席に浅く腰掛けた状態では、緊急時などで強くブレーキを踏んだ際に腰が後方にずれ、ブレーキペダルの踏み込みが浅くなり、十分な 制動力を発揮できなくなります。また、腕が伸びきった状態では、緊急時に十分かつ的確なステアリング操作ができなくなります。背もたれを 倒し過ぎた状態では、視点が下がるため、視覚情報の獲得を行いにくくなります。
回答者 中村
質問 不適切な運転姿勢とペダルの踏み間違いに関係がありますか?
回答 今回実施された実験の中で、不適切な運転姿勢での模擬運転中に踏み外し事例が3件(30件中)確認されました。不適切な運転姿勢を 取ることで、運転中にドライバーの身体の軸がブレてしまい、足とペダルの位置関係を適切に把握出来なかった可能性が示唆されました。
回答者 中村

踏み違えることの影響

質問 ドライバーが誤った操作をした際の動揺は,事故に至る前に検出することはできますか?
回答 ドライバーが,誤った操作をしたときに動揺することの予測・検出は,生体信号を用いることで十分に可能であると考えられます.今回は驚いた ときにみられるまばたき,「驚愕性瞬目反射」に着目しましたが,残念ながらドライバの動揺状態の検出はできませんでした.しかし,驚くときに あらわれる「顔や上半身の筋肉の収縮」や,「心拍情報」などの生体指標を用いることで動揺が検出できると考えており,これらの情報を,事故を 低減するために自動車制御に利用できると考えております。
回答者 小谷・朝尾・荒川・渡邉
質問 エラーした後の行動をみることがなぜ必要なのですか?
回答 確かに,アクセルとブレーキの踏み間違いの問題では,そもそも,どのようなことが影響して,「踏み間違い」が起こるのかを検討する必要性があります。 「踏み間違い」の起こりやすさの分析です。この点の検討は非常に重要です。一方で,高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違い事故では,踏み間違え が起きた「後」も,アクセルを踏み続けてしまい,大事故につながることも多いようです。踏み間違い,すなわちエラーが起きた「後」の対処の仕方を分析 する必要性もあると考えました。
回答者 土田
質問 エラー後の行動では,どのような特徴がみられたのですか?
回答 今回の調査結果から,大きく分けると2つのことが明らかになりました。一つは,エラー後に反応を切り替えること(例えば,アクセルからブレーキに踏み 変えること)に,老化の影響がでやすいということです。高齢者では,状況判断して「アクセル」を踏むまでに相当する時間をベースにして比較すると,エラー 後に「ブレーキ」を踏むまでに相当する時間が,かなり長くなってしまいました。反応を切り替えるということは,予想以上に,高齢者にとって,負荷がかかる 「作業」といえそうです。さらにもう一つ明らかになったことがあります。それは,このような反応の切り替えが「苦手」になるということは,認知機能の低下が 「問題化」していない,ごく健康な高齢者にも起こりうるということです。今回調査の対象となった方々には,認知機能検査(MMSE)も受けていただきました。 その結果,調査対象者の平均は30点満点中29点というものでした。日常生活において,全く問題がみられないレベルといってもいいと思います。このような 方々においても,反応の切り替えが「苦手」になっていることは注目すべきことかもしれません。。
回答者 土田
質問 高齢者では,エラー後の対応はどのような場面で特に遅れるのでしょうか?
回答 高齢者では,エラーを起こした反応そのものが,「エラー後の対応」にも影響することを今回の調査結果が,示しています。例えば,同じエラーを 起こしたときでも,躊躇せず反応してしまったような場合や,反応に躊躇の跡がみられた(反応に時間がかかった)場合がありました。この違いを後から 分析してみると,高齢者においては,反応に躊躇したうえで,その反応がエラーになってしまった場合,その後の対応が遅れてしまう傾向がありました。少 し専門的な言葉を使うならば,直前の反応がエラー後の対応にも大きく影響する,「波及効果」の起こりやすいことが推察されました。
回答者 土田

脳波による認知機能評価

質問 事象関連電位とは何ですか?
回答 なんらかの事象をトリガーにして脳波を切り出し,複数回(通常15以上)加算平均すると,その事象に関連した脳波の変化のみを取り出すことができます.これを事象関連電位と呼びます.
回答者 大須賀・鎌倉
質問 眼球停留関連電位・P3とは何ですか?
回答 眼球停留関連電位は事象関連電位の一種です.人は通常,目を動かして外界を探索しています.なんらかの刺激に注意を惹かれると,目を停めて詳細な情報を取り込みます. そこで,目が停まった時点で脳波を切り出し,加算平均すると,情報を取り込み判断している脳の過程に対応した電位変化が得られます.
P3は事象関連電位の正(Positive)方向の3つ目の成分で,取り込んだ情報に意味づけをしたときに生じます.平たく言うと,「わかった」というときです.判断に時間がかかると P3潜時(事象からP3のピークまでの時間)が延びます.
回答者 大須賀・鎌倉
質問 認知機能の衰えを調べたいなら反応時間で十分ではないですか?なぜ脳波を調べるのでしょうか。
回答 反応時間は刺激を提示してからボタン押しなどの操作が行われるまでの時間です.反応時間が延長することで総体的な衰えを捉えることができますが, 発見が遅れたのか,判断が遅いのか,操作が遅れたのかの区別はつきません.どの機能が低下しているかを詳しく調べることで,その人に合った支援を行うこと ができると考えています.
回答者 大須賀・鎌倉

踏み違いの防止

質問 踏み間違いの防止装置は有効でしょうか。
回答 強くアクセルを踏んだときに加速を減じるような装置は、加速し続けて大きな被害を出すということを防ぐという意味で有効だと思いますが、踏み 間違い事故そのものは防げるわけではないと思います。たとえ急加速しなくても、車が進みつづけることはドライバーにとって混乱をもたらし、ペダルから 足を離す(=ブレーキに踏みかえるということができない)ということができないことも考えられ、ゆっくり進んでいってぶつかる、というタイプの事故は起こる と思います。
回答者 篠原
質問 高齢ドライバーが踏み間違えないために留意すべき点は何ですか?
回答 認知機能は加齢に伴って変化していきますが、その変化に応じた運転をすることが必要と考えます。若い頃は確認するにしても、一つ一つを 見なくても視野に対象を捉えれば、すばやく確認できたと思いますが、これは次第に難しくなってきます。また発見が遅れて驚く(慌てる)という 可能性も若い頃より増えてくると思います。しかし加齢に伴って注意できる量や範囲が減っていき、若い頃なら気づくことができたものを見落としたりす る可能性があること、慌てた時に適切でない反応をとっさにする(=踏みかえずにいきなりペダルを踏み込むというのはその一例)ことをふまえると、 以前よりも速度を落とし、運転に集中し、一つ一つの確認対象を確実に見ながら運転する必要があると思います。特に、駐車場のような複雑な 運転環境ではこれは非常に重要な点だと思います。
これは一見、踏み違いの対策にならないように思われるかもしれませんが、見落としを減らし、反応しなければならないときにも慌てず時間的な 余裕を持って反応できることになるので、結果的には踏み間違いを含む様々な事故を防ぐことに繋がります。(
回答者 篠原